運営している書道教室に、小学校の下校途中で立ち寄った受講生が入って来た。
「ただいまー」
それは、元気に発したのです。
「えっ (誰? と思いながら、つかさず) おかえりー」
もう、何年も教室に通っている受講生が、元気な声で入って来た。表情は、普段より明るく、何だか自信に満ちている。
ランドセルから、小学校の国語の宿題を取り出して、
「後で、これ見てくれる?」
いつもの彼とは、少し違う様子だったので、よほど、何かを伝えたいのか、困っているのだろうと思い、
「うん、いいよ」
と、私は答えた。
しばらくして、再び彼が教室にやってきた。
いつも通りのお稽古をし、受講生が少なくなるのを見計らったように、先ほど手にしていた、国語の宿題を取り出した。
「これなー、見てみて。今日、ここでこの宿題やりたいねん」
見ると、なるほど、私に見せたかったはずだ。
象形文字、指事文字、会意文字、形声文字の区別と、学習済みの漢字をそのグループに当てはめて、理由とともに説明する宿題だった。
私が教えなくても、彼は、小学校の授業中に理解できているので、宿題もすべて自分自身で出来る。ただ、私の目の前で、習ったことをわかっていると見せたかったのだろうか。
小学5年生といっても、やはり、かわいいものですね。
「書道の理論もちゃんと勉強できるといいんやけどなーって、前に先生が言ってけど、これのことやろー」
宿題を終えて、一言彼が言った。
そんなことを言ってたかな? 私。確かに、日ごろから、そんなことを考えてはいる。口走ったのかもしれない。小学生の純粋な心に感動するとともに、私も学び続けねばならないなっと、思う。