今月の書道鑑賞入門は、昨日の感動をみなさんにお伝えします。
昨日、絶対感動するとわかっていたので、感動を求めに『今井凌雪━人と書のすべて━』展覧会初日に奈良県文化会館に足を運んだ。
1967年毎日書道展 隷書五言聯 216×58.5cm×2
多くの書道家は、確かに一枚で作品を仕上げることを理想とするが、一般に一枚目で作品が仕上がることは無い。今井先生も、草稿を準備し、筆を運び始め、一枚目を書き終え、次から次へと書き込まれたという。
しかし、結局、一枚目に書かれたこの作品を選び、出品されたそうだ。
随分前に、「一枚目を出品するのだったら、そんなに書かなければいいのに・・・」と、奥様がご主人である今井先生の体調を気遣って、おっしゃっていたことを、作品を前にして思い出した。
近年の作品から、
今井凌雪=篆・隷作家
と思われがちである。
会場では、今井先生が数多くの書体、書風で作品にされていることを
今回の作品展で、驚かれる方も少なくない。
ご愛用の文房四宝には、親しみと書に対する想いの深さを感じる。
上右側の墨。手には小さく、磨れなくなった墨をついでいる墨。手でさすりたくなる墨です。
下左側は、依頼を受けて提供されたもの。お弁当やマッチ箱、本の題など。
周りでは、マッチ箱の串かつ屋さんへ行ったことがある。
駅弁を買いに行った。
など、今井凌雪ファントークに花が咲いていました。
上右側 実用書であっても、手を抜かない。
のし袋一枚書くために、何度も半紙に練習している姿を目撃した方は、
「先生、まだ、のしに書かないの?」と感じたという。
書を学ぶものに対し、厳しくもあり、暖かくもある。
自ら、その手本となって、積極的に臨書、臨模に取り組んでおられた。
紙をこんな風に染めたら・・・・・
こんな工夫をしたら・・・・・
先生に話すと、ご自身の経験を披露してくださる先生でした。
今井凌雪先生は、やっぱりすごい先生だったと思う。
今回の展覧会では、
今井凌雪先生がこちらの世界におられる時間に少しでも関われたことについて、
私自身、あらためて、その幸いを思い知る機会になりました。
もっと、いろいろ質問しておけば良かった。
聞きたいことがたくさん残っている。
尋ねる前に、やるべきことが、山積している。
やるべきことを、今は、ひとつひとつこなすしかないことを
つくづく思い知らされた。
観覧しておられた方が、
「一からやりなおします。」
と、言い残し、会場を後にされた。
この展覧会には、そういう力がある。
私は、心とお腹いっぱいにして、会場を後にした。
書道を鑑賞する為に理論は、わかっていた方がいいとは思うけれど、
書道を楽しむという点では、心動かされる作品を何度も目にすることが、
大切だと思う。
今回の展覧会作品図録と凌雪印存
奈良展 2014年4月30日~5月6日 奈良県文化会館
東京展 2014年7月25日~7月29日 上野の森美術館
各会場でしか拝見できない作品があるそうです。
できれば、両会場に足をお運びください。