キラキラと目を輝かせて、ひそひそ話でもするように、質問に来た小学生。
「書道って、かっこいいよね。僕も、カッコよく書きたいけど、どうしたらいいですか?」
お正月には、神社などの書き初め会やテレビで書き初めなどを見る機会が多い。
そういうものに触れて、書道に対する関心を増す小学生は、少なくない。
私は、彼の質問を聞いて、きっと、そういうものをカッコいいと感じたのだろうと、
思った。
「どういう書道をカッコいいと思うの?」
予想した答えではなく、驚かされる答えがかえってきた。
「筆がビヨンビヨンして、めっちゃきれいで、かっっこいい字」
なぬーっ!!!
筆を振り回して、ここで書きたいと言い出したらどうしよう。
心の中で叫びながら、冷静を装い、じっくり聞くしかないと、
腹をくくる。
「例えば、どんな感じ?」
小学生は、親に大好きな食べ物でも懇願するように、
膝を上下に折りながら、
「もーーーーーっ、こんな感じ。」
えっ!!! 席に戻ったと思いきや、
「これっ!」と、素早く私の前に平素の手本を差し出した。
彼の目は、少しうるみ、なぜわかってくれないのと、訴えている。
「ごめん。そういうことだったのかぁ。」
椅子に座っている私より、立っている彼の身長は、低い。
そんな彼に、私は、書に興味を持たせてしまったこと。
重い責任と彼の興味を裏切ってはならぬと、
新年早々、心を引き締める機会となった。
上っ面だけの書表現ではなく、奥行きのある本物の書道を
言葉ではなく感じ取ってくれていることは、
従来の書道教室とは、異なる教室運営を心がけてきたことの成果でもある。
先の質問の答えは、結局、コツコツと繰り返し、
当たり前のことを当たり前に継続して、お稽古するしかない。
少しでも、早く上達するには、目を育てるしかない。
目を育てるとは、鑑賞する力のことです。
先の小学生は、感受性が豊かであると同時に添削などの機会に、
えんぴつの動き、筆の動きを、瞬きするのも忘れているのかと思うほど、よく見ている。
彼がカッコよく字を書く日は、きっと近い。