今年の墨歩展(ぼくほてん)では、「ちょっと難しいに挑戦しよう」というテーマのもとで、出品者の方々は、誰もが、難しいと感じることに挑戦している。
百人一首もそのひとつ。
出品者の方々のうち、希望者のみで、ボールペンや万年筆、筆ペン、小筆などの筆記具を用いて、百人一首を書いている。
学生の出品者にとっては、日ごろ、一筆箋などを目にする機会が少ないため、新鮮な気持ちで一筆用箋に文字を慎重に書きこんでいる。
何度も書き直す人もいれば、一発書きの人もいる。
大人は、全く違うから、その対比は、面白い。
大人は、あらかじめ、何度も書き込み練習をし、ようやく、清書する方が多い。中には、時間切れとして、提出される方もおられるが、ほとんどの方が、満足気な顔をしていない。
子供たちには、書き終えた喜び、難しいことに挑戦できた喜び、単に書き終えて開放された喜び等、顔に頑張った人にだけ見られる表情がみられる。
大人も、本当は、そんな笑顔が潜んでいるのだろうが、日常生活で表情をおさえる習慣からか、表に出される方は、少ない。もっと、素直になれるとストレスが無くなるのかもしれない。ふと、そんなことを思った。
百人一首に挑戦している学生の中には、大人顔負けの知識で、低学年の小学生に和歌の意味などを説明している姿を見ていて、知的好奇心大解放って感じがして、とてもうれしい。
書道教室を運営している身としては、やはり、書道を通じて知的好奇心を刺激したい思いがある。ただ字を書くだけでは、得られない喜びを得て欲しいと願う。そして、子供たちであれば、将来につながる知的好奇心を刺激し、生涯を心豊かにする素材を得て欲しいとも、願っている。
今年の墨歩展準備を通じて、少しそれが出来ているかなって思えることは、今年の大きな成果かも知れない。